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【検証】「鉛筆」じゃなかった!ベートーヴェン肖像画「羽ペンに見えない秘密」

筆記用具

 

「Stationery♥Log」(ステーショナリー♡ログ)にお越しいただきありがとうございます。

 

今日のテーマは「ベートーヴェン肖像画に描かれた筆記具」についてです。

 

<多くの人が抱える「音楽室の記憶のズレ」>

 

日本の学校の音楽室で、あの厳しい顔のベートーヴェンの肖像画を見た記憶があるでしょうか?

 

楽譜を前に、鋭い眼光でこちらを見つめる天才音楽家。大人になってその肖像画を見直してみると、彼が手にしている筆記具を見て「あれ?これって鉛筆じゃないか?」と思いませんでしたか?

 

記憶では羽ペン(クイル)のはずなのに、細くてシンプルな軸はまるで現代の鉛筆のよう。この「記憶のズレ」は、多くの人が抱える共通の疑問です。

 

今回の記事では、文房具愛好家の視点も交えながら、この有名な肖像画に描かれた「筆記具の本当の正体」「当時の筆記文化」に迫ります。この記事を読めば、次にこの肖像画を見たとき、「画家の深い意図」「筆記具の進化の歴史」を感じられるはずです。

 

1.肖像画の基本情報と「筆記具の正体」

 

まず、問題の肖像画の基本情報から確認しましょう。

 

(1)肖像画の作者と描かれた意図

 

作者:ヨーゼフ・カール・シュティーラー(Joseph Karl Stieler)

制作年:1820年頃

描かれた状況:ベートーヴェンが代表作の一つである『荘厳ミサ曲』を作曲し、楽譜に定着させている最中の姿。このため、日本の音楽室に飾られる定番となっています。

彼が持つもの:右手には当時のペン、左手には楽譜を持っています。

 

(2)結論:描かれているのは「永続的な記録のためのペン」である

 

この肖像画に描かれているのは、当時の筆記具の中でも、永続的な記録を残すためのインクを使うペンである可能性が極めて高いです。

 

なぜなら、この肖像画は作曲の「完成」を象徴するものであり、正式な楽譜の記録(清書)に、下書き用の鉛筆が使われることは当時の文化としてあり得なかったからです。

 

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2.【本題】なぜ「羽ペン」が「鉛筆」に見えてしまうのか?

 

インクを使う「ペン」なのに、なぜ私たちの記憶にある「羽ペン(羽根がついたペン)」の姿ではなく、細くシンプルな「鉛筆」のように見えてしまうのでしょうか?

 

鍵は、画家シュティーラーの「芸術的な意図」「筆記具の進化の過渡期」にあります。

 

(1)芸術的表現:羽根の「省略」

 

最大の理由は、画家が羽根の部分を意図的に省略したことです。

羽根の部分をあえて描かなかったということですね。

 

羽ペンは非常に大きく、羽根の部分が目立ちます。しかし、シュティーラーはベートーヴェンを「天才」として描き、「創作への精神的な集中力」「内面のエネルギー(内面的な苦悩)」を最大限に強調しようとしました。

 

余計な装飾となる羽根を描かず、筆記具の「軸」だけを強調することで、以下のような効果を狙ったと考えられます。

  • 集中力の強調: 視覚的なノイズをなくし、作曲という行為だけに焦点を当てた。
  • シンプルさの追求: 筆記具という道具そのものよりも、創造的な思考の伝達手段であることを示唆した。

 

(2)筆記具の進化:金属ペン先の可能性

 

また、肖像画が描かれた1820年頃は、筆記具が進化する過渡期でした。

 

従来の羽ペンに加え、羽根を必要としない金属製のペン先(ニブ)を軸に挿して使う「ディップペン」が登場し始めていました。

 

描かれたシンプルで細い軸は、当時の木軸や骨軸に金属ペン先を装着した「新しいペンの形」を表現している可能性もあります。

 

(3)小まとめ(現代の鉛筆との類似性)

 

このため、肖像画の筆記具は「羽ペンを省略したもの」「当時の新しい金属ペン先」のどちらかと解釈でき、どちらも鉛筆のように細いという共通点を持つのです。

 

「羽ペンを省略したもの」「当時の新しい金属ペン先」のどちらか、いずれの場合にせよ、羽根が描かれていない細い軸は、現代の私たちが日常で使う鉛筆に酷似しているため、「鉛筆だ」という記憶のズレが生じやすいのです。

 

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3.文房具視点で見る「当時の筆記具の使い分け」

 

当時の作曲活動における「筆記具の役割」は明確に分かれていました。

 

筆記具 主な用途 特徴と肖像画との関係
羽ペン(クイル) 公式な文書、清書楽譜の完成版 耐久性のあるインクを使用。当時の主流なペンで、肖像画が描く「記録(作曲)の完成」という行為を象徴する。
鉛筆(黒鉛) 下書き、訂正、メモ 消せる利点があるため、初期のアイデアや訂正用に使用された。(清書には不向き)
金属ペン先(ニブ) 清書(羽ペンより耐久性がある) 羽根がなく、軸に金属のペン先を付けたもの。羽根がないため、肖像画の筆記具が現代の鉛筆のように細く見える一因となった。、後の万年筆の基礎となった。

 

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4.まとめ:小さな筆記具に込められた大きな意図

 

ベートーヴェンの有名な肖像画の筆記具は、「羽ペン」から「鉛筆」に変わったわけではありません。

 

ベートーヴェンの有名な肖像画に描かれた筆記具の正体は、

結論「羽ペンを省略した姿」「新しい金属ペン先」のどちらかでしょう。

本質: しかし、どちらにせよ、それは永続的な記録のための「ペン」であり、下書き用の鉛筆ではないという点では一致しています。

 

このシンプルな軸の解釈は二通り考えられます。画家シュティーラーは、この筆記具を通して、以下の二つの意味合いを読者(鑑賞者)に委ねたと解釈できるのではないでしょうか。

集中力の表現: 余計な装飾を排し、偉大な音楽家が精神を集中させてインクで楽譜を書き記すという、神聖な瞬間を表現した。

時代の象徴: 当時まさに進んでいた、筆記具が羽根から金属へと進化する「過渡期」を象徴的に描いた。

 

この曖昧さこそが、肖像画の奥深さです。次に音楽室の肖像画(シュティーラーによる肖像画)を見たとき、彼が持つ「鉛筆のようなもの」に込められた、「画家の深い意図」「文房具の歴史」を感じ取られてみてはいかがでしょうか。

 

文房具って本当に良いものですね♡

 

※ベートーヴェンの肖像画については、「マンデラ効果」(多くの人が誤った共通の記憶を持っている現象)的な部分もあるとは思いますが、「ステーショナリーログ」ですので、筆記具にフォーカスして書いてみました。

ちなみに、私の場合は、ベートーヴェンは①何も持っていないか②羽の付いた羽ペンを持っていたかのどちらかだったような気がしていたのと、表情も結構怖い顔だった記憶があるのですが、子どもの頃の記憶ですので、曖昧になっていたのかもしれませんね。

 

以上、【検証】「鉛筆」じゃなかった!ベートーヴェン肖像画「羽ペンに見えない秘密」についてでした。

 

「Stationery♥Log」(ステーショナリー♡ログ)をご覧いただきありがとうございました♡

 

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