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今日のテーマは「クレヨラ152色の世界!伝説の『肌色』を変えたトリビア」についてです。
前回はクレヨラクレヨンの歴史と「Craie+Ola」というネーミングの秘密を紐解きました。今回は、クレヨラ最大の魅力である「色」に焦点を当てます。
特に「152色」という圧巻のカラーバリエーションは、単なる画材を超え、ひとつの色彩文化を築いています。その色名には、社会の価値観やブランドの哲学が凝縮された、奥深い物語が隠されているのです。
※↓「クレヨラ」クレヨンの基本の「24色セット」です。
※↓「クレヨラ」クレヨンのかわいいパステルカラーの「24色セット」です。
1.知的好奇心を満たす!ユニークな色名の命名トリビア

クレヨラのクレヨンセットを開くと、赤や青といった一般的な色名に混じって、思わず二度見してしまうようなユニークな名前が並んでいます。
これらの色名は、単なる開発者の思いつきではなく、時代性とユーモア、そして色彩哲学が反映された結果です。
例1:宇宙とサイバーの時代
- Outer Space(アウタースペース): 深い群青色。宇宙開発競争が激化した時代背景を反映しています。
- Laser Lemon(レーザーレモン): 鮮烈な蛍光イエロー。未来的なテクノロジーへの憧れが込められた、サイバー時代の色です。
- Unmellow Yellow(アンメロウイエロー): 直訳すると「穏やかでない黄色」。普通の黄色では表現できない、刺激的なトーンを示す秀逸なネーミングです。
これらの色名に共通するのは、色を見たときの感情や、連想されるイメージをそのまま表現しようとする、クレヨラ独自の哲学です。
例2:消えた「伝説の色名」と色名変更の哲学
クレヨラは常に新しい色を導入する一方で、色を廃盤にしたり、色名だけを変更したりしています。その背景には、主に、「「市場の需要変化」と「時代と共に古びた難解さ」という2つの理由があります。
ちなみに、色の一掃が最も大規模に行われたのは、「1990年」です。
この年、クレヨラは新世紀に向けてブランドを刷新するため、長年セットに含まれていた地味な色や専門用語が使われた色を一挙に廃止し、鮮やかで新しい色を大量に導入しました。これが、ファンから「退屈な色の一掃(Boring Color Purge)」と呼ばれる出来事です。
①【廃盤:需要の低下(と希少化)】
Maize(メイズ): かつて存在した「トウモロコシ」色。現代のセットでは見かけません。廃盤になった当時は、より鮮やかな新しい色が市場に投入される中で、相対的に需要が低下したことが理由の一つと考えられます。
しかし、現在では「伝説の色」としてコレクターの間で非常に人気があります。これは、廃盤になったことで希少価値が高まった典型的な例です。
②【廃盤:難解な専門用語の終焉】
Raw Umber(ローアンバー): 芸術の専門用語で「生アンバー色」という意味で、子供には難解でした。また、クレヨラは、この「Raw Umber(ローアンバー)」とともに、初期のセットには「Van Dyke Brown(ヴァン・ダイク・ブラウン)」などの画家の名前に由来する「教養的な色名」も導入していました。
「Raw Umber(ローアンバー)」のような抽象的な専門用語だけではなく、「Van Dyke Brown(ヴァン・ダイク・ブラウン)」のような「世界に存在する具体的な物語や歴史」を色名を通して伝えようとしていたと推測されます。
クレヨラは、これら専門的・教養的な色名をセットに採用することで、単なる「分かりやすさ」を越え、画材としての格調や教養の付与を試みていたことを示唆しています。
しかし、市場の反応は厳しく、教養的な色名であった「Van Dyke Brown(ヴァン・ダイク・ブラウン)」は導入後まもなく短命に終わりました。一方で、難解な専門用語である「Raw Umber(ローアンバー)」は、短命に終わった教養的な色名よりも長くセットに残り続けたという対照的な結果となりました。
そして、最終的に、「Raw Umber(ローアンバー)」も含めた地味で専門的な色調は、1990年の「一掃」の中で姿を消し、子供たちの求める「想像力と活力」に満ちた新しい色名へと道を譲ることになったのです。
※↓「クレヨラ」クレヨンの基本の「24色セット」です。
※↓「クレヨラ」クレヨンのかわいいパステルカラーの「24色セット」です。
2.【ブランド哲学】伝説の「肌色」を変えたドラマ

クレヨラの色名に隠された哲学の中で、最も社会的な議論を呼んだのが「肌色(Flesh)」という色名の変更です。
(1)なぜ「肌色(Flesh)」は問題になったのか?
かつて、クレヨンセットには当然のように「Flesh」という名前の色が含まれていました。しかし、この色が「特定の肌の色(白人)」を指し示していることは明らかでした。
多文化が共存する社会において、「これだけが標準的な肌色である」というメッセージを送り続けることは、多様性の尊重という観点から大きな問題となります。
(2)1962年:「ピーチ(Peach)」への変更という英断
クレヨラはこの問題に真摯に向き合い、1962年に「Flesh」という色名を「Peach(ピーチ)」へと変更しました。
これは、単なる色名の変更ではなく、クレヨラがブランド哲学として「多様性」と「すべての人を受け入れる姿勢、インクルージョン(包摂)」を明確に打ち出した、歴史的な出来事です。
メッセージ性: この変更は、「特定の肌の色だけが標準ではない」という強いメッセージを世界に発しました。クレヨラは、色を通して「あなた(すべての子ども)もこの世界に、そしてこのセットの中に含まれている」という、多様性を受け入れる温かい姿勢を示したのです。
この一連のドラマは、クレヨラが単なる画材メーカーではなく、社会的な変化を敏感に捉え、率先して行動する企業であることを証明しました。
※↓クレヨラの「肌色クレヨン」24色セットです。
※↓「マーカー」タイプもあります。
3.色名から見える「社会と時代の変化」

クレヨラの色名は、まさに「社会と時代の変化」を映し出す鏡です。
| 時代背景 | 色名の傾向 | 代表的な色名 |
| 初期(20世紀初頭) | 伝統的な顔料名や自然物、教養的な名前 | Sepia(セピア)、Raw Sienna(生シエナ) Raw Umber(ローアンバー)、Van Dyke Brown(ヴァン・ダイク・ブラウン) |
| 冷戦・宇宙時代 | 科学や未来、工業的なイメージ | Outer Space(アウタースペース)、Atomic Tangerine(アトミックタンジェリン) |
| 現代(多様性の時代) | 感情的、ユーモラス、インクルーシブ | Jazzberry Jam(ジャズベリージャム)、Peach(ピーチ) |
私たちはクレヨンを手に取るたびに、その色名に隠された歴史的な流れと、クレヨラが込めた哲学的メッセージに触れているのです。
4.まとめ:色名に隠されたブランド哲学と未来

クレヨラの色名に隠された哲学を知ることは、単なるトリビア収集ではありません。
「Laser Lemon」のようなユニークな色名に込められた時代の空気や想像力。そして、「肌色」から「ピーチ」への変更に見られる、多様性とすべての人を受け入れるブランドの揺るぎない姿勢。
私たちはクレヨラのクレヨンを手に取るたびに、単なる顔料の塊ではなく、「社会を映す鏡」を握っていることに気づきます。
小さな紙ラベルに刻まれた色名は、過去の歴史を伝え、あらゆる人が受け入れられる未来を願う、クレヨラからの知的なメッセージなのです。
以上、「【色名に隠された哲学】クレヨラ152色の世界!伝説の『肌色』を変えたトリビア」についてでした。
「Stationery♥Log」(ステーショナリー♡ログ)をご覧いただきありがとうございました♡
※↓「クレヨラ」クレヨンの「64色セット」です。
※↓日本で一般的に販売されているセットの中では「120色セット」が一番色が多そうです。
※「クレヨラ」については全4記事書いています。本記事は「2記事目」です。
| 順序 | 記事のタイトル | 記事の役割 | 記事と思考の対応 |
| 1 | 【歴史と裏側】世界一の定番「クレヨラ」クレヨンが100年愛される秘密 | 導入・ブランドの魅力 | Why? (なぜクレヨラは世界一なのか?) |
| 2 | 【色名に隠された哲学】クレヨラ152色の世界!伝説の「肌色」を変えたトリビア | 知識・文化的な深掘り | What’s the philosophy? (色名や歴史に隠された哲学は?) |
| 3 | 【大人目線】クレヨラ vs クーピーペンシル!最適な「アナログ画材」の選び方 | 実用・比較検討と選定 | Which one? (結局、大人にはどれがベストなのか?) |
| 4 | 【知ればもっと面白い】クレヨラで楽しむ「色の科学実験」ワックスの現象と応用術 | 応用・科学的なロジック | How does it work? (なぜ水が弾かれる?仕組みは?) |
※↓「クレヨラの1記事目」です。

※↓「クレヨラの3記事目」です。

※↓「クレヨラの4記事目」です。










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